2025.05.21

ベトナムのサプライチェーンと輸送

ベトナムは、その経済成長、拡大する中間層、戦略的な地理的位置、政府によるインセンティブなどにより、外国企業にとって魅力的な市場として台頭しています。ブランドがベトナム市場に参入したり、市場拡大戦略を立てる際には、同国独特のサプライチェーンと流通構造を理解することが重要です。

ベトナムのサプライチェーン

ベトナムには主に二つの経済中心地があります。北部はハノイを中心とし、南部はホーチミン市を中心としています。内陸の輸送は主に道路が利用され、2023年9月時点で1,822kmの高速道路網が整備されています。

ベトナム北部地域のサプライチェーン

首都ハノイは、北部地域におけるすべての商業活動の中心地です。航空貨物はハノイにあるノイバイ国際空港を通じて輸出入されており、同空港の年間貨物処理能力は20万3,000トンです。一方、海上貨物についてはハイフォン省の港湾システムを利用しており、年間最大1億7,000万トンの貨物を取り扱うことができます。

倉庫・配送センターシステムは主にハノイおよび隣接するバクニン省、フンイエン省に整備されており、ハノイをはじめとする周辺地域への効率的な配送が可能になっています。

ベトナム南部地域のサプライチェーン

ホーチミン市は南部地域だけでなく、ベトナム全体の商業・金融の中心地です。世界的なサプライチェーンとは、ホーチミン市内のタンソンニャット国際空港(年間貨物処理能力35万トン)およびバリア=ブンタウ省のフーミー港システム(2023年の輸入貨物取扱量630万トン)を通じてつながっています。現在建設中で2026年に完成予定のロンタイン空港が開港すると、年間500万トンの貨物処理能力がさらに追加されます。また、ホーチミン市にはフーミーからの貨物積み替えを支援する河川港システムもあります。

ビンズオン省とドンナイ省は地域のサプライチェーンにおいて重要な役割を果たし、倉庫・配送センターのインフラを提供しています。

北部と南部の消費者トレンドの違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。

内陸輸送

国内の陸上物流ネットワークは主に道路を介して行われています。ベトナム政府は道路インフラ整備を支援するための政策を数多く実施しています。同国の高速道路網は現在約1,822kmですが、2026年までに3,893km、2030年までに6,470km、2050年までに9,014kmへと拡大する計画です。

ベトナムの流通構造

ベトナムの小売流通システムは、伝統的(一般流通)な流通チャネルと近代的な流通チャネルが混在し、近年はeコマースの役割も高まっています。地元の小売店、市場の屋台、露店などで構成される一般流通チャネルは、ベトナムの小売売上の約3分の2を占めています。一方、近代的な流通チャネルは売上の約26%にとどまり、主に大都市や都市部で利用されています。

近代的な流通チャネル

近代的な流通チャネルを通じた配送は標準化されており、比較的シンプルです。ベトナムの近代的流通ネットワークは、各業界の主要な小売企業が支えています。これらの小売企業は自社内に配送センターと配送ネットワークを整備しています。

主な小売企業は以下の通りです。

  • 食品・消費財分野
    • Wincommerce:WinMartおよびWinMart+ブランドで3,000店舗以上
    • Saigon Union:Saigon Co.op、Co.opmart、Co.opXtraなど約1,000店舗
  • テクノロジー・電子製品分野
    • Mobile World:thegioididong.com、Dien May Xanh、Bach Hoa Xanhなど約4,000店舗
    • FPT Retail:FPT Shop、F.Studio(アップル製品専門)で約800店舗
    • MediaMart:全国に300店舗以上

一般流通チャネル

一般流通チャネルは、地域の文化に深く根ざしており、消費者によって広く利用されています。こうしたチャネルを活用することで、ブランドはより広範囲で多くの人々にリーチすることが可能になります。ただし、効果的な一般流通ネットワークを構築するためには、大規模な投資と多くのリソースが必要です。

小規模な小売店が多数存在するため、それらを十分にカバーするには、大規模な営業部隊を地域ごとに分けて展開する必要があります。販売拠点への配送は通常、少量ずつ小型トラックやバイクで行われます。そのため、多大な労力を回避する目的で、地元の流通業者が利用されることもよくあります。

一般流通への参入には多額の投資が必要なため、外国のブランドは通常、まず近代的な流通チャネルを通じて市場を試したのち、次のステップとして一般流通チャネルへと拡大していくケースが一般的です。

ベトナムのサプライチェーンに関するよくある質問

ベトナムのサプライチェーンにどのような課題がありますか?

現在のベトナムのサプライチェーンシステムには、以下のようないくつかの課題があります。

  • インフラの課題:物流インフラはまだ発展途上で、輸送手段間の連携や同期が不十分です。最新の倉庫設備も不足しています。
  • 業界の分散化:物流業界は小規模・中規模の企業が多く、非常に分散化しています。
  • 規制環境の複雑さ:ベトナムの規制環境は複雑であり、企業にとって課題となります。

これらの要因により、企業のコスト増加、業務の遅延、効率性低下が発生します。

なぜ企業はベトナムに参入するのか?

サプライチェーンに関する課題があるにもかかわらず、外国企業は製造拠点としても消費市場としてもベトナムへの進出を続けています。ベトナムは安定した経済成長を遂げており、消費者の可処分所得も向上しています。

拡大する中間層と消費支出の増加により、様々な製品やサービスに対する強力な市場が形成されています。さらにベトナムは、特にデジタル化や自動化といった技術の進歩を積極的に取り入れています。こうした近代化は、国内で事業を展開する企業の効率性や競争力を向上させています。また、現在のサプライチェーンに関する課題も段階的に改善が進められています。

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