世界のFMCG市場を理解する

FMCG(消費財)とは?
FMCG(Fast Moving Consumer Goods、高回転消費財)またはCPG(Consumer Packaged Goods、消費者向けパッケージ商品)とは、頻繁に購入される消費者向け商品群で、回転率が高く比較的低価格であることが特徴です。
FMCG製品は頻繁に消費され、繰り返し購入されるため需要が高くなります。そのため、製品の寿命は一般的に3年以下と短く設定されています。これらの製品は利益率自体は低いものの、販売数量が非常に多いため、小売業者にとって大きな累積収益をもたらしています。
具体的には、家庭内で日常的に消費される食品、飲料、パーソナルケア製品などがこれに該当し、家庭における非耐久財への支出の大部分を占めています。
この業界は競争が非常に激しく、FMCG企業は消費者の好みや市場のトレンドに合わせて常にイノベーションを起こし続ける必要があります。そのため企業が最適なビジネス上の意思決定を行うには、市場調査を通じて常に最新の市場情報を把握することが不可欠となっています。
主なポイント
- FMCGは「高回転消費財」を指す
- 業界の主な分野には食品・飲料、パーソナルケア、家庭用品などが含まれる
- 最近のトレンドとして、持続可能性、健康志向、Eコマースのデジタル化が挙げられる
- FMCG企業は市場や消費者の動向を把握するために市場調査が不可欠である
FMCG業界の分野
FMCG業界は幅広く、様々な製品が含まれています。主な分野は次の通りです。
- 食品・飲料:スナック、乳製品、飲料、加工食品
- パーソナルケア・美容:化粧品、スキンケア、ヘアケア、衛生用品
- 家庭用品:洗剤、清掃用品、消臭剤
- 電子機器・家電製品:小型家電、迅速に消費される電子機器
- ベビー・子供用品:ベビーフード、おむつ、育児用品
- ペットケア:ペットフード、ペット用グルーミング用品
- タバコ・関連製品:タバコ、葉巻など
世界の主要FMCGブランド
- ネスレ(Nestle)
- ペプシコ(PepsiCo)
- ユニリーバ(Unilever)
FMCG業界の3つのトレンド
1. サステナビリティ(持続可能性)
FMCG企業は世界の排出量の大部分を占めています。世界経済フォーラムによると、食品とFMCG産業が世界の温室効果ガス排出量の3分の1以上を生み出しています。
消費者が環境意識を高める中、ミレニアル世代は環境に優しい行動を選ぶ傾向があります。調査によると、消費者の78%がクリーンで持続可能な、リサイクル可能な、または天然成分を提供するブランドを好んで選ぶようになっています。約57%の消費者は、環境への影響を減らすために購買習慣を変えることを検討しています。そのため、消費者がFMCG製品を購入する際、ますます慎重な判断をするようになり、よりクリーンで環境に優しい代替製品を選ぶようになっています。
さらに、炭素排出量の報告に関する法規制が世界的に拡大しており、より多くのFMCG企業が自社の気候変動への影響を報告することを求められています。そのため、FMCG企業は自社の炭素排出量を評価し、開示する必要があり、これにより企業活動の透明性が高まります。この透明性は、環境意識の高い消費者が炭素排出量の少ない企業を好んで選ぶことにつながり、消費者の認識に影響を与える可能性があります。
こうした動きは大手FMCG企業にも注目されており、各社はサステナビリティや環境に配慮した取り組み、とりわけ持続可能な製品パッケージの採用を急速に進めています。例えば、ロレアルやユニリーバなどのブランドは2025年までにすべてのパッケージをリサイクル可能なものに切り替えると約束しています。企業は報告義務や消費者トレンドの変化に対応し、先を見越してビジネスにおける持続可能な実践を取り入れるため、イノベーションを加速する必要があります。
2. 健康とウェルネス
健康への関心が高まる中、消費者は自身のウェルビーイング(心身の健康)に対してより意識的になっています。2021年のニールセンIQの世界健康・ウェルネスレポートによると、オーストラリア、中国、インドネシア、インド、シンガポール、韓国、タイなどを含むアジア太平洋市場の消費者の半数以上(54%)が、積極的に健康とウェルネスを優先しています。これは、FMCG製品の各分野で、より健康的で栄養価の高い製品への需要が高まっていることを示しています。消費者が自分の健康をサポートする製品を重視するにつれて、FMCG企業はこうした変化する嗜好に対応するためにイノベーションを進め、新しい製品の開発や既存製品の改良を行う必要があります。
3. Eコマースのデジタル化
ここ数年のEコマース(電子商取引)の急成長、特にCOVID-19の影響によるオンライン需要の急増は、FMCG市場を大きく押し上げました。調査によると、FMCG製品のオンライン売上高は2023年までに1兆ドルに達すると予測されており、2030年にはFMCG売上の11%を占めるとされています。Eコマースの拡大は、従来の小売チャネルではアクセスが難しかった新たな消費者層や地域市場への参入を可能にし、FMCG企業に新しい機会をもたらしています。消費者は幅広い製品にオンラインで容易にアクセスできるようになり、食品や日用品、パーソナルケア用品などを手軽に購入できます。そのため、FMCG企業はデジタルマーケティングやオンラインでのブランド最適化に積極的に投資を進めており、デジタル空間におけるブランド認知度や顧客エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
FMCG市場の課題
FMCG業界の競争は非常に激しく、各製品の機能自体は似ているため、ブランドや消費者の感情的な訴求による差別化が主な競争要素となっています。FMCG小売業者は一般的に薄利多売型のビジネスモデルであり、大量市場への訴求や規模の経済、幅広い流通網に成功を依存しています。そのため、市場シェアを守り、顧客のロイヤリティを育成するには、ブランドの強みを確立し、認知度を高めることが重要です。
また、消費者トレンドや競合状況は絶えず変化しており、FMCG市場で活動する企業が市場での競争力を維持し、市場シェアを獲得するためには、消費者の習慣や嗜好、認識を常に把握しておくことが不可欠です。製品の市場投入を成功させるためには、綿密な市場調査が鍵となり、これによって企業は市場を理解し、適切な準備ができるようになります。市場に関する洞察に投資することは、投資収益率(ROI)の向上だけでなく、消費者行動や市場の力学、カテゴリ内でのブランドの位置付けについて貴重な理解を得ることにもつながります。
FMCGが経済に与える影響
FMCG市場は世界経済において非常に重要な役割を果たしています。数百万人規模の雇用を生み出すと同時に、大きな収益をもたらしています。
FMCGにおける市場調査
常に変化し競争の激しいFMCG業界において、企業は絶え間ないイノベーションを行い、新たな戦略を取り入れる必要があります。例えば、コカ・コーラが健康志向の消費者を引きつけるために「コカ・コーラ ゼロシュガー」を発売したように、こうした取り組みには、消費者行動や市場トレンド、新しい市場機会に関する鋭敏な理解が求められます。そのため、包括的な市場調査が、絶えず変動する消費者の嗜好や競争環境の中で、FMCG企業が進むべき方向を示す羅針盤として重要な役割を果たします。市場調査には競合他社の強みや弱みを深く分析し、市場に存在するギャップや新たなチャンスを特定することが含まれています。これにより企業は自社戦略を改善し、市場で効果的に差別化を図ることが可能になります。
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